KOHNOSU Toshiyuki
総合情報学部 情報学科 教授
大学院 総合情報学研究科 コンピュータサイエンスコース 教授
博士(工学)
早稲田大学
符号理論 / 情報理論 / 情報数理応用
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所属する学会は温泉場で開催されるのが慣例になっているため、いろいろな温泉に出かけています。東北とか九州なんかに多い、色や肌触り、匂いなどにちょっと癖のある温泉が好みです。

ICTの重要な基盤技術「誤り訂正符号」で
デジタルデータの信頼性を守れ!

数値、文字、音声や画像などの物理的な量や状態を、0と1の組み合わせに変換して扱うのがデジタル。アナログに比べ信号を正確に伝送できますが、それでも伝送中に間違ってしまうことはあります。
鴻巣研究室では、誤りからデータを守る仕組み「誤り訂正符号」を研究しています。

データを関数に入力して
検算を行うことでデータの間違いを発見

デジタルデータを記録したり通信したりする場合、ノイズが原因で0が1あるいは1が0に間違って伝わってしまうことがあります。そこで、誤りを検知し、ある程度の誤りなら修正する「誤り訂正符号」という仕組みが発明されました。

データを一定の長さごとに切り分け、データを関数に入力して計算することで出てくる検査記号を付け加えます。読み込みや受信の際には、検査記号を使って整合性を検証することでデータが正しいかどうかを確かめ、誤りがあれば復元します。CDの表面に小さな傷があっても読み出せるのは、誤り訂正符号が働いているおかげ。

昔の真空管式の電子計算機の記憶装置の信頼性や宇宙から地球に画像を送る技術の研究から発展し、今やインターネットや携帯電話、HDDやBlu-Rayなどあらゆる伝送に不可欠な基盤技術の一つとなっています。

組織符号の構成
データが正しいかどうかを確かめ、誤りがあれば復元するための検査記号。検査記号は、情報記号を一定の関数を使って計算したもの
ISBNコードは組織符号の構成
書籍や資料の識別コードISBNは、以前は10桁の番号で構成されており、10桁目の数字が文字の誤りを検出できるように組み込まれていた。この仕組みは、2元{0, 1}ではない「誤り訂正符号」の原理
誤り訂正符号を逆手に取ったQRコードのデザイン
誤り訂正符号の機能を使って、二次元コードの中にわざと誤りが発生する箇所(イラスト)を入れ込むことも可能。誤り訂正符号のおかげで、正確な情報が読み取れる

情報技術の進化に伴走する 
誤り訂正符号の能力を評価

1950年代から発展してきた誤り訂正符号は、現代までにさまざまな種類が生み出されました。また発生する誤りの特徴や、使用するアプリケーションによって最適な符号が選ばれるようにも進化してきました。いくつかの符号を組み合わせて使うといった技も生まれており、日々進歩しています。

鴻巣研究室では、こうした誤り訂正符号の能力を評価する研究を進めています。符号を長くすると誤りの検知や訂正の能力は向上します。その反面、計算量が増えてデータを伝送する際の負荷が大きくなるため、際限なく長くすることはできません。

一方でLSIや信号処理技術の進化によって、以前は使えなかったような長い符号が、今では簡単に処理できる可能性も出てきています。誤り訂正符号の研究では、過去に発明された符号が再評価されることも珍しくありません。実際、過去に発明された符号を現在の課題にミックスすることで、イノベーションが起きています。

Hamming符号の符号化・復号の例
1950年にR.Hammingによって提案されたHamming符号は、最も古い誤り訂正符号の1つ。コンピュータの主記憶メモリなどに使われてきた

情報理論の父・シャノンが示した限界を目標に
進化を遂げる誤り訂正符号の世界

アメリカの電気工学者・数学者で「情報理論の父」とも呼ばれるクロード・シャノンは、情報理論を打ち立て、どんな形式の情報もビットに変換して送受信を行う通信方式を確立しましたが、同時にノイズのある通信路で正しくメッセージを伝えられる効率には限界があることを示しました。これをシャノン限界と呼びます。
誤り訂正符号はシャノン限界を達成する、実行可能な符号を求めて進化してきました。5Gに採用された誤り訂正符号は、一定の通信路においてシャノン限界に迫るものとして注目されています。デジタル技術を支える縁の下の力持ちの分野だけに、今後の進化が期待されます。

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