数値、文字、音声や画像などの物理的な量や状態を、0と1の組み合わせに変換して扱うのがデジタル。アナログに比べ信号を正確に伝送できますが、それでも伝送中に間違ってしまうことはあります。
鴻巣研究室では、誤りからデータを守る仕組み「誤り訂正符号」を研究しています。
デジタルデータを記録したり通信したりする場合、ノイズが原因で0が1あるいは1が0に間違って伝わってしまうことがあります。そこで、誤りを検知し、ある程度の誤りなら修正する「誤り訂正符号」という仕組みが発明されました。
データを一定の長さごとに切り分け、データを関数に入力して計算することで出てくる検査記号を付け加えます。読み込みや受信の際には、検査記号を使って整合性を検証することでデータが正しいかどうかを確かめ、誤りがあれば復元します。CDの表面に小さな傷があっても読み出せるのは、誤り訂正符号が働いているおかげ。
昔の真空管式の電子計算機の記憶装置の信頼性や宇宙から地球に画像を送る技術の研究から発展し、今やインターネットや携帯電話、HDDやBlu-Rayなどあらゆる伝送に不可欠な基盤技術の一つとなっています。
1950年代から発展してきた誤り訂正符号は、現代までにさまざまな種類が生み出されました。また発生する誤りの特徴や、使用するアプリケーションによって最適な符号が選ばれるようにも進化してきました。いくつかの符号を組み合わせて使うといった技も生まれており、日々進歩しています。
鴻巣研究室では、こうした誤り訂正符号の能力を評価する研究を進めています。符号を長くすると誤りの検知や訂正の能力は向上します。その反面、計算量が増えてデータを伝送する際の負荷が大きくなるため、際限なく長くすることはできません。
一方でLSIや信号処理技術の進化によって、以前は使えなかったような長い符号が、今では簡単に処理できる可能性も出てきています。誤り訂正符号の研究では、過去に発明された符号が再評価されることも珍しくありません。実際、過去に発明された符号を現在の課題にミックスすることで、イノベーションが起きています。
アメリカの電気工学者・数学者で「情報理論の父」とも呼ばれるクロード・シャノンは、情報理論を打ち立て、どんな形式の情報もビットに変換して送受信を行う通信方式を確立しましたが、同時にノイズのある通信路で正しくメッセージを伝えられる効率には限界があることを示しました。これをシャノン限界と呼びます。
誤り訂正符号はシャノン限界を達成する、実行可能な符号を求めて進化してきました。5Gに採用された誤り訂正符号は、一定の通信路においてシャノン限界に迫るものとして注目されています。デジタル技術を支える縁の下の力持ちの分野だけに、今後の進化が期待されます。
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