ONISHI Katsuhiko
総合情報学部 情報学科 教授
大学院 総合情報学研究科 コンピュータサイエンスコース 教授
博士(情報科学)
大阪大学
バーチャルリアリティ(VR)/ 医用工学 / ヒューマンコンピュータインタラクション
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新しいデバイスが発売されると、つい試してみたくなります。同じくらいスイーツも大好きで、美味しそうなケーキを見かけると、これもつい手が伸びてしまいます。そんな⽇常を楽しめるように、健康のために週に数回はスポーツジムに通って汗を流しています。

福祉・医療も、エデュテインメントも
VRがコミュニケーションを進化させる!

「まるで現実」のような世界、つまり仮想現実=VRは、ゲームなどの非現実の世界を楽しむのに優れた技術であることはよく知られています。
大西研究室では、こうしたVRの技術を、福祉や医療、教育といった分野で効果的に活用する研究に取り組んでいます。

さまざまな手術のスキルアップを支援する
手術シミュレータ・ナビゲータを開発

腫瘍を摘出する外科手術などの際には、医師は切除する腫瘍の位置を把握して細心の注意を払いながら手術を進めていきます。けれども人間の体内はさまざまな組織や器官が複雑に組み合わされた3次元空間。入り組んだ部位の切除など非常に技術が求められる場合があり、事前のトレーニングや、手術中のナビゲーションなどの支援が求められています。

そこで大西研究室では、手術シミュレータや、手術ナビゲータの開発に取り組んでいます。

たとえば、シミュレータの画面には実際の撮影データに基づいて作られた3Dモデルの臓器が映し出され、腫瘍がマーカー表示されます。ユーザーは周囲の血管を傷つけないように腫瘍を取り出す訓練ができます。さまざまな症例をもとに、病巣を立体的(3次元)に理解することにも役立ちます。

また手術ナビゲータでは、手術中に映し出される医師の視界に、実際の腫瘍の場所をわかりやすく表示する方法についても検討しています。病巣の撮影データを基に計算した臓器内での位置関係が再現できれば、より臨床にあった効果的な、シミュレーションができるようになります。

同一の臓器をレイヤーごとに表示し、病巣をマーカー表示

下垂体腫瘍摘出術などで利⽤される⿐腔内視鏡下⼿術のナビゲータ(プロトタイプ)

鼻から内視鏡を入れて脳下垂体の腫瘍を切除する手術。このナビゲーションシステムではどの骨を削るかなど、細かい術式を検討できる

リハビリのサポートから博物館の展示品鑑賞まで
HCIを取り入れ、ユーザーにやさしく

リハビリテーションや福祉の分野においても、VRの技術を利用して暴露療法をサポートするシステムを研究しています。

たとえば、高齢者が転倒した経験などから段差に対して芽生えた恐怖感を取り除くために、実際に踏み台を段差と見立て、VRゴーグル内のさまざまなシチュエーションの段差を見ながら昇降します。こうしたリハビリによって段差に慣れることをめざします。

また、博物館や美術館などの貴重な展示品への理解を深めるために、タブレット端末を利用した展示支援システムも開発しています。珍しい楽器など簡単にはふれられない展示品の前では、タブレットをかざすと楽器の音が流れ、解説文を読むことができます。近づくほどに音が大きくなったり、制限時間内に楽器を探し出すといった、ゲーム要素も導入。ガラスケースの中で展示品が陳列されているだけでなく、鑑賞者が自分の意思で積極的に関わることができるため、展示品への興味をより強く引き出すことができます。大西研究室では、こうした“楽しみながら学べる”新しい形の展示を提案しています。

 VR曝露療法システム
段差での転倒した経験などから芽生える恐怖感を取り除くために、VRゴーグル内のさまざまなシチュエーションの段差を見ながらリハビリを行う
VRの技術を利用し、ゴーグルを付けた状態で踏み台を昇り降りすることで、多様なシチュエーションの段差が体験できる
楽器の展示支援システム
楽器の展示支援システム
鑑賞者は展示された楽器をタブレットを通して鳴らしたり、文化的な背景を紹介する解説文を読んだりとインタラクティブに関わり、楽しみながら学べる

五感の全てを再現したホログラムの誕生で
地球の裏側の友達ともハグできる!?

現在のVRは音声やビジュアルがメインですが、今後は音・匂い・皮膚感覚・味といった五感の全てを創り出す技術が生まれるでしょう。
情報技術の歴史はコミュニケーション支援の歴史でもあります。自分が3Dのホログラムとなり、遠く離れて暮らす友達と握手やハグする日も遠くないかもしれません。

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