大阪大学医学部附属病院臨床工学部 臨床工学技士

誰かの大切な命を守るため
医療ニーズに応え続ける人になる

清水 美玖さん/2016年 医療福祉工学科卒業・2018年 本学大学院 医療福祉工学専攻修了(大阪府 大阪電気通信大学高等学校 出身)

※2025年4月より健康情報学科 医療工学専攻へ変更予定

現在の仕事内容

ひとつとして同じ手術はない。
患者さんの命を救うため、経験を積み重ねる。

わたしはいま、臨床工学技士として働いています。手術中の患者さんに人工心肺をつなぎ、患者さんの命をつなぐ役目を担っています。人工心肺は、手術部位の視野を確保するために必要な装置。たとえば心臓を持ち上げたり裏返したりする手術や、心臓の大きな血管を切開する手術の場合、出血で心臓が見えなくなることがあり、術野を確保するためには心臓を止める必要が出てきます。そこで、人工心肺を使い、心臓のポンプ機能と肺のガス交換機能を担うことで、手術の進行を支えています。

ひとつとして同じ手術はなく、症例や患者さんの状態によって人工心肺の動かし方は毎回変わります。一人前になるためには、ひとつでも多くの臨床経験を積むことが重要になるため、いくつもの手術に参加し現場から多くのことを学んでいます。

現在は、人工心肺だけでなく、さまざまな医療機器の配線やトラブル対応といったメンテナンス業務、カテーテル検査業務、人工透析等、幅広い仕事を担当しています。一人でも多くの患者さんの命を救うために、責任と誇りを持って職務に取り組んでいます。

入職したきっかけ

壮絶な現場でも冷静に対応する
臨床工学技士に憧れて

学生時代に大阪大学医学部附属病院で経験した臨床実習が、わたしの人生を大きく前に進めてくれました。臨床実習では実際の緊急手術にも立ち合わせていただいて、命のかかった現場の壮絶さを目の当たりにしました。そんな緊迫した状況下で、わたしの目に飛び込んできたのは、キビキビと手術室を動き回る臨床工学技士の姿。それを見て、臨床工学技士という仕事の素晴らしさを肌で感じ、どんな状況でも動じず冷静に対処できる臨床工学技士になろうと決意しました。

大阪大学医学部附属病院では、大阪電気通信大学の講師を担当してくださった方やお世話になった先輩も勤務しています。さらに、海外のドクターが手術に訪れたり、日本初症例の手術が行われたりする環境であり、最先端の医療技術を学べるところにも惹かれました。

わたしは、臨床工学技士の仕事の中でも、人工心肺に携わりたいと考えていました。大阪大学医学部附属病院は、人工心肺を扱う症例数が多く、業務に精通している方もたくさん在籍しています。そこに大きなチャンスを感じ、入職を決めました。

仕事のやりがい

飛行機の操縦に似ている人工心肺の操作
手術が成功した時、大きな達成感があります。

人工心肺の操作は一度に複数の機器を扱うことや、その操作に手術中の患者さんの命がかかっていることから「飛行機の操縦に似ている」と言われています。人の命にかかわるため、プレッシャーが大きい仕事ですが、無事に目的地に到着した時、つまり手術が成功した時の達成感は言葉にできません。さらに、自分の貢献で患者さんが元気になったことを知った時には、また次も頑張ろうと活力が湧いてきます。

患者さんの命にかかわるからこそ、わからないこと、知らないことがあってはならないのがわたしたちの仕事。だからこそ、不明点をドクターやナースに積極的に質問したり、認定資格を取得したりといった、日々の努力が欠かせません。

現場経験を一つひとつ積み重ねるとともに、学術的な勉強も続けて、人工心肺に関して知らないことが何一つない状態にすることが目下のわたしの目標です。医療技術は日進月歩で進化していますし、高齢化が進む日本では医療のニーズも多岐にわたっています。カテーテルや透析等の技術もさらに磨いて、ニーズに応えていくことで、患者さんの治療に貢献していきたいです。

大学に入学したきっかけ

人の命を救う臨床工学技士になりたい
その想いが日に日に強くなっていった。

わたしは、スポーツが好きで身体について興味があり、さらに機械を操作することにも関心を持っていました。中学生の頃に大阪電気通信大学高等学校のパンフレットを見て、「臨床工学技士」という仕事を知り、大阪電気通信大学の医療科学科に入学しました。

実は、わたしは教員にも興味を持っていて、将来について迷っていた時期がありました。しかし、大学で実習や実践的な学びを繰り返していくうちに、臨床工学技士になりたいという気持ちが高くなり、働く姿をイメージできるようになりました。改めて振り返ってみても、この学科を選択したことは間違ってなかったと感じています。

印象的な大学での学び

情報量が鍵となる臨床工学技士の仕事。
データを集めることの大切さを学んだ。

学外の講師を招いて行われた人工心肺の授業が心に残っています。患者さんのバイタルや検査データを確認して、こういう血液検査の状況だったらどうするか、患者さんの血圧が下がっていたらどうするのか、といった実践的な授業を行ってくださいました。

臨床工学技士となって実際に人工心肺を動かすようになったいま、情報を集めて現場に臨むことの大切さを学んだあの授業が、いかに本番を想定したものだったのかがわかりました。臨床工学技士の仕事は、限られた時間の中で、患者さんの症例、身長・体重、血液検査の結果、レントゲン・CTの結果、既往歴等の情報をもとに、適切な医療機器の操作を行うことが求められます。もし大学に戻ることができたなら、もう一度受けたい授業です。

受験生へのメッセージ

現場のプロフェッショナルから仕事を学び、
羽ばたいていける環境。

大阪電気通信大学は、現場経験のある先生から、臨床工学を教えてもらう機会があります。医療機器の使い方から、プロとしての心構えまで、スペシャリストから直接教わることができるため、在学中から幅広い経験を積むことができました。臨床工学技士として働く中で、学科で学んだことの中に、不必要なものは何ひとつなく、学生時代に学んだことはすべて、入職してからの日々で役立っています。

さらに、医療科学科は、臨床工学技士としての進路だけでなく、医療機器の操作や臨床工学の知識を活かして、メーカーや企業へ就職する道が拓かれています。自分を信じて進んでください。学びを深めた先で、きっと、理想のキャリアが見つかると思います。