MATSUMURA Masafumi
医療健康科学部 医療科学科 教授
大学院 医療福祉工学研究科 医療福祉工学専攻 教授
工学博士
大阪大学
生体情報の計測ができるウェアラブルデバイスとAI技術によるデジタルヘルスケア

早朝と夕方、1時間半ぐらいウォーキング(有酸素運動)が最近の習慣です。電話も来客もない「頭の自由時間」なので、ついつい研究のことを考えてしまいます。思いがけず、いいアイデアが浮かび突破口になることも。

首は口ほどにものを言う!? 
ウェアラブルデバイスで健康を守る

スマートウォッチで生体情報を計測し、健康管理に役立てている人が増えています。
松村研究室では、首もとに着目したウェアラブルデバイスを開発中。心電図や血圧、呼吸や嚥下など身体の情報を幅広く集める新しい機器が、健康の維持や病気の発症予測に活用できるよう、研究に取り組んでいます。

ウェアラブルで実現! 
24時間-日常の生体情報をモニタリング

松村研究室の研究テーマは、生体情報を計測するウェアラブルデバイスの開発です。松村教授は、首もとに電極をつけて心電図を測定できる技術を開発し、特許を取得しています。また、マイクで首もとの音情報を集め、呼吸や嚥下の様子をモニターする方法についても研究。大笑いした回数を測定する爆笑計など、ユニークな技術を生み出してきました。こうした研究成果を技術的に応用し、現在は心電図や喉(のど)の音など複数のセンサーを内蔵した、首もとにつけて使うネックバンド型デバイスを開発しています。

近年は、このネックバンド型デバイスならではの特性を活かし、普段通り、食事をしたり買い物に出かけたりする生活を送りながら、連続して血圧をモニタリングできる技術を開発。この血圧の推定は、心電図と光電脈波のデータから、脈波が伝わる時間を実計測し、血圧の上がり方を分析・演算し、最高血圧を予測する仕組みになっています。

ネックバンド型デバイスは、一般的に使われている腕や手首に巻くタイプの血圧計と違い、安静にしていなくても計測でき、普段の、日常生活の中での運動時最高血圧をモニタリングできることから、血圧の急変(血圧サージ)を検出して体調の予測や病気の予防に役立つと期待されています。松村教授は、現在、この予測式最高血圧(データ推定)を1秒間隔できめ細かく取得することにも挑戦しています。

ネックバンド型スマートセンサ。ワイヤレス通信でモニタリングする
ネックバンド心電計で計測した心電図の波形

呼吸音や血液中の酸素量など
睡眠中の呼吸の状態をモニタ

松村教授は企業との共同研究を進め、首もとのマイクで呼吸音を計測し、呼吸の状態をモニタできる製品「Sleeim」を開発。これはドライバーの事故などで注目された、睡眠時無呼吸症候群の症状を検知し、睡眠の質を測定するウェアラブルデバイスです。

「Sleeim」は、睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状である、寝ている間のいびきや、呼吸が浅くなったり止まったりする状態を呼吸音で計測。さらに、松村教授の開発した光電脈波センサで首の動脈を流れる血液の酸素飽和度を測定する技術を搭載。低酸素状態かどうかをより正確に計測できるようになっています。

松村研究室では、現在さらに進化したウェアラブルデバイスを実現するための要素技術の開発を進めています。また、デバイスを使ったAIによるデータ解析にも取り組んでおり、収集したデータを活用し、健康の増進や新たな治療法の開発に貢献したいと考えています。

産学共同研究で生まれた「Sleeim」。2020年度グッドデザイン賞を受賞した

生体情報の常時モニタで
医療はもっと進歩する!?

松村研究室のネックバンド型デバイスは、さまざまなセンサを搭載して周囲の状況を判断し、運転中の危険を回避する車の自動運転に似ています。
日常的に時々刻々収集される生体情報計測で、常に身体の内側の変化に目を光らせておく。それによって、重症に陥る前の予兆のようなデータがキャッチできれば、発症前に予防的入院治療が可能になります。また、心筋梗塞や脳梗塞といった重大疾患の前兆発見にも期待できます。

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