MIZUNO Yuji
医療健康科学部 医療科学科 准教授
大学院 医療福祉工学研究科 医療福祉工学専攻 准教授
博士(工学)
長崎総合科学大学
再エネを利活用したAI技術による病院電力システムのレジリエンス強化 / ウェアラブルセンサとAI技術による健康管理システム
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休日は、3人の子どもと過ごすのが楽しいです。博物館や水族館に行ったり、プログラミングをしてロボットを動かしたり。それぞれの好きなことに付き合っていると、時間がいくらあっても足りません。

AIを活用して
医療・福祉の現場を支援

いまあるものをどうしたらもっとよくできるか、もっと上手に使えるか。膨大なデータを学習し分析するAIの力で、様々な課題が見つかり解決が図られています。
水野研究室では、医療・福祉分野にフォーカス。人の生体情報から医療施設の安全設計まで、AI技術を使って臨床の現場を支援しています。

脇にはさめない人に優しい
ニュータイプ体温計の開発

体温計は私たちにとって身近な医療機器の一つです。特に腋(わき)の下にはさむタイプの腋窩(えきか)型電子体温計は簡単に使え、短時間で実測値を正確に予測する使い勝手のよさが評価されています。

一方で、病院などの臨床現場では高齢者を中心に頻繁に計測エラーが発生することが問題になっています。脂肪や筋肉が減り痩せ過ぎると、測温部が肌に密着せず、ズレ落ちてしまうことが原因です。

水野研究室ではこうした問題を解決するため、測温部のまわりにスポンジ球を取り付けて腋にはさみやすくした電子体温計を提案しています。

電子体温計の仕組み
水銀体温計が計測に5分かかるのに比べ、電子体温計は「予測式」が採用されているため10秒・30秒といった短い時間で測定が可能。検温開始からの温度と湿度変化を分析し、上昇傾向を演算で導き出し、約10分後の体温を予測して表示する仕組み

試作品による実験では、予測精度の点では実用化が期待できる優れた結果が出ています。ただ、課題は予測時間の長さです。スポンジは熱が伝わりにくく、予測に時間がかかります。そのため、現在は実用化のネックとなっているスポンジの材質そのものを検討し、熱伝導性の高い物資を含ませるなど、素材の開発にも力を入れています。また、AI技術を導入することで、予測精度を高める研究も行っています。

軟質ボールを測温部に持つ電子体温計

エネルギーマネジメントで
災害時の地域医療を守る

また水野研究室では、医療施設のエネルギー・マネジメント・システムについての研究も行っています。

全国には、災害が起こった時に地域の災害医療を支援する770の災害拠点病院が指定されています。これらの病院は国によって、通常の6割程度の自家発電機が3日動く程度の燃料を保有しておくことが定められています。一方で、ここ最近の災害時の実状を見てみると、ライフラインの復旧には1週間程度停電が続いたケースも数多くあります。

そこで水野教授は、災害拠点病院向けに、安定した電力を1週間程度キープできる効率のよいエネルギー・マネジメント・システムの構築をテーマに研究を続けています。

たとえば、気象データに基づいた電力需要予測モデルを使って、効率の良いエネルギー制御を提案。また、非常用発電機として燃費のよい小型発電機を複数台用いる方法や、太陽光発電や小容量バッテリーを併用する形で、緊急時に必要な電気量を確保するといった方法。さらに、AIを活用して必要な電気量と各機器に必要な消費電力の最適化を図るなど、現実的な条件をベースに供給方法を検討。そのほか、電気自動車を使って患者さんを移動・避難させる場合の最適な経路を分析するなど、実際の災害事例をふまえた提案を行っています。

病院のエネルギーマネジメントシステム
災害が起こると、非常用発電機、太陽光発電と小容量バッテリがはたらき、1週間程度安定した電力を供給して医療サービスを提供。また、高齢者や負傷した患者さんの搬送手段に電気自動車を活用することで病院と自動車の蓄電システムが融合でき、地域全域に対応した災害医療システムが実現できる

健康と環境をコントロール
最適化された家に災害に強い町づくり

人がいるかいないかを検知して室温を調節する賢いエアコンがありますが、もっと賢くなると、どんなことが可能になるのでしょうか。
人の体温や脈拍といった生体情報を測定し、それに応じた環境をキープする「健康住宅」の登場。また、家単位、エリア単位でエネルギーマネジメント機能を組み込み、ムダなく効率のよいエネルギー消費や災害対応を実現する町づくり。そう遠い未来の話ではなく、人の命を守る技術の進歩に大きな期待がかかります。

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