TACHIBANA Katsunori
医療健康科学部 医療科学科 准教授
大学院 医療福祉工学研究科 医療福祉工学専攻 准教授
博士(工学) / 臨床工学技士
大阪電気通信大学
体液センシングを応用した臨床支援技術

陸上、テニス、アイスホッケーとスポーツはいろいろやってきました。今はまたテニスに戻り、週2回の練習に励んでいます。かつては大会に出て優勝したことも。膝をいたわりながら、長く続けていきたいです。

QOLを高めるために
ユニークなセンサを開発

医療や介護にとって、患者のQOLを守り高めることは、最も重要なテーマの一つであるといえます。
橘准教授は、臨床工学技士として患者と向き合った経験から、臨床を支援する技術や生活の質を落とさず、快適に過ごせるようQOLの向上に役立つ研究を進めています。人の目や手を補い、より行き届いた医療・介護の実現をめざしています。

人工心肺装置を利用する 
心臓手術の合併症を防ぐ

人工心肺装置は臨床工学技士が管理する高度な生命維持管理装置の一つで、心臓と肺の機能を止めて行う手術には欠かせない存在です。全身から戻ってきた血液を、大静脈につないだ管で身体の外に出し、心臓の役目をする血液ポンプで送血を行います。また、人工肺では血液へ酸素を付加し、二酸化炭素を除きます。さらに大動脈につないだ管で全身に戻すという仕組みになっています。

人工心肺装置を使用すると血液を送る回路内で赤血球が壊れてヘモグロビンが遊離する「溶血」という現象が起こりやすくなります。この状態を放置すると腎機能の低下につながるため、できるだけ早く発見し薬剤を投入して腎臓を守ることが重要です。しかし、現状の臨床では溶血の確認は人の目に頼っています。

橘研究室では、この「溶血」を、目に見えないレベルで連続的に検知することを目指しています。具体的には人工心肺装置における回路内に光を用いたセンサを設置して遊離ヘモグロビンを早期に検知するシステムを開発しています。

この検知システムでは、遊離ヘモグロビンの赤色をよく吸収する波長の光を使用します。遊離ヘモグロビンに光が当たるとその濃度に応じて光が吸収され、元の光の強さより弱くなります。つまり、弱くなったことを計測することで遊離ヘモグロビンが混じっているかどうかを判断する仕組みです。模擬遊離ヘモグロビン液を用いた実験では、目に見えないレベルにおいても検知が可能であることが明らかとなりました。

人工心肺装置の仕組み
溶血検知デバイスの概要

紙おむつの外からでも
排尿を検知するシステム

心臓の手術中に起こる合併症のリスク低減とともに橘研究室で取り組んでいるのが、排尿管理の負担軽減です。寝たきりの患者のおむつ交換はQOLにも大きく関わりますが、排尿のタイミングや量に合わせて交換をするのは、なかなか難しいのが現状です。

橘研究室では、こうした排尿検知ができるシステムの開発にも取り組んでいます。まずは患者の負担をできるだけ軽減するよう、直接肌に触れなくても排尿が検知できるセンサの開発に着手。現在、薄いシート状の電極を格子状に配置し、PETフィルムで覆って絶縁した電極シートを開発し、紙おむつの外から排尿を検知することに成功しています。

電極シートの上に紙おむつを置いて水を含ませ、微弱な電流を流すと、インピーダンスと呼ばれる電気の流れにくさの値が変化します。模擬尿を使って人体に似たトルソで行った実験では、インピーダンスの変化をとらえることで排尿の有無を検知しその量を推定することが可能であるとがわかりました。現在は、より精密な尿量を推定できるよう研究を進めています。

センサやAIのサポートで
医療や介護の質を高める

人の目には見えないものまで精緻にチェックする、忙しくて人の手が回らないところを助けるなど、センサの助けを借りることで医療や介護の世界は大きく変わりそうです。
医療スタッフや介護スタッフの負担を減らしつつ、サポートの質そのものは現在より高くなる。AIと組み合わせることで、溶血の検知から薬剤の投与まで自動化が進めば、安全性の高い手術サポートが可能になるかもしれません。またさまざまな検知システムが進化し連動することで、一人ひとりの病状や生活リズムに合わせたケア・サポートが実現するかも知れません。

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