同じ学科の藤川智彦教授に師事し、前衛書を始めて2年。仕事終わりに字を書くのが習慣です。墨の匂いを嗅ぐと心が落ち着き、無心になれるのがいいですね。大きな筆で書を書くとストレス解消になります。
ヒトは立ち上がる時、どの筋肉をどのように使っているのでしょうか。
小出講師らの研究グループはその仕組みを解明し、モデルで再現。さらに、この成果をリハビリテーションの分野に応用することで、寝たきり防止や健康寿命を伸ばすのに役立てようとしています。
ヒトは立ち上がる時、股関節を伸ばす大殿筋、膝関節を伸ばすための大腿四頭筋を使っているとされています。
小出講師は、「まっすぐ上に向かって立ちあがる」という動作を、筋電計によって詳しく解析。その結果、大殿筋はほとんど使われておらず、代わりに、大腿四頭筋のうち、特に内側広筋と大腿直筋をメインに立ちあがり動作が行われていることを突き止めました。この立ち上がり動作を支える2つの筋のうち、大腿直筋は股関節と膝関節の二関節を結ぶ大きな筋肉で、重心や姿勢を安定させる役割を果たしていることが明らかになりました。
小出講師は、現在この立ちあがり動作が、「老化などによって立てなくなる」現象を解明するべく研究に取り組んでいます。また、こうした研究によって明らかになった筋肉動作のメカニズムを活かして、トレーニング機器の開発にも着手。「立ちあがり」動作のキーとなる大腿四頭筋を中心に鍛えられるトレーニングマシンの開発をめざしています。「立ちあがり」動作ができることは、寝たきり防止の観点からも重要な意味を持ちます。同時に、同じマシンでアスリートのパフォーマンスアップが目指せるような、多目的で必要に応じた筋肉が鍛えられるトレーニングマシンをコンセプトに、開発にあたっています。
また、小出研究室では臨床工学技士をめざす学生のための教育機器の開発にも取り組んでいます。臨床工学技士は、人工心肺装置や人工呼吸器、人工透析器など患者さんの生命を維持する装置を扱う医療専門職です。臨床現場では、医師や看護師と同じように聴診を行い、呼吸音や心音をはじめ患者さんの身体から発せられている異常音を聴き分けねばならない状況が多々あります。
聴診では、正常音とされる音の範囲や「副雑音」と言われる、さまざまな病気や症状からくる特徴的な音を聴き分けることが求められます。患者さんの病状を正確に把握するには、当然のことながら膨大な知識や経験が必要で、聴診は現役医療スタッフにとっても難易度の高いスキルの一つとされています。
そこで、小出研究室ではVR技術を使った聴診の学習システムを開発。実際の聴診音の中から様々な音を収集し、よりリアルな音を再現。聴診の手技についても学習できるシミュレーションシステムを構築するべく、アップデートを重ねています。
日本は平均寿命も健康寿命も世界一。その差が示す、「日常生活に制限のある不健康な期間」は、男性で約9年、女性なら12年になります(厚生労働省「eヘルスネット」2019年調べ)。「立ちあがり」のメカニズムをはじめ、QOLに直接影響を与える動作の解析や解明が進めば、今後、予防的治療(技術)が発展することも期待されます。
リハビリで脳に意識付けを行い老化による筋肉の衰えを遅らせる、そんな予防的治療が一般化する日が来るかも知れません。長寿大国・日本が、健康寿命大国に進化していけるかどうか、リハビリテーションの基礎研究に期待がかかります。
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