KANEDA Hiratoshi
共通教育機構 人間科学教育研究センター 教授
修士(教育学)
京都教育大学
生涯スポーツ参与の諸因に関する研究
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硬式野球部部長に着任したときは、部員が3人。以来20年以上、スポーツ観戦もつい「仕事の目」になり、純粋に楽しめません。休みは仕事も野球も離れ、家族サービスに努めることにしています。

スポーツ指導はどう変わる!?   
イメージの伝達に着目した研究

スポーツ指導の世界は、すでに科学的分析の時代へと移行しています。近年では、技術面や体力面だけでなく、心理学的な知見をベースにしたメンタルトレーニングにも注目が集まっています。
金田教授の専門はスポーツ心理学。本学硬式野球部部長としての経験を生かし、ユニークな研究を行っています。

スポーツ動作の体得を左右する
イメージの働きとは

スポーツには「心・技・体」が重要だとよく言われますが、それらは互いに密接に結びついています。「心」のトレーニングであるメンタルトレーニングの中に、身体に対する気づきを得る技法が多く見られるのもその表れ。自分の身体の状況を正確に把握したり、運動中の動作のイメージを明確にすることが、運動技術の獲得に大きな影響を及ぼしていると考えられています。

金田教授の研究テーマは、この動作のイメージとパフォーマンスの関係性です。初心者に向けたダーツの指導についての実験では、「ダーツを投げる瞬間を思い浮かべることができるか」「構えたときの自分の足にかかる感覚を思い浮かべることができるか」といった質問による調査でダーツの運動イメージの特徴や構造を分析。運動の学習と運動イメージとの関係を探りました。

また、野球における投手の投球動作の獲得において、身体感覚を意識させる方法についても研究。動作の修正につながる、イメージを選手にインタビューを通して明らかにする試みも行ってきました。

ダーツイメージ鮮明性テスト検証的因子分析
左)コッキング前期動作の分析 右)リリース時までの動作を分析

指導の言葉を解析し
イメージを伝える技術を追究

長年、本学硬式野球部の部長を務めてきた金田教授は、「スポーツ指導者にとって重要なのは、選手のパフォーマンスを観察してその描くイメージを理解し、同時に指導者が描くイメージを選手に伝えること」だと考えています。そのため、金田教授は選手とのコミュニケーションの軸に「指導記録」を置き、これを活用したパフォーマンスの向上を目指してきました。メンバーの多いチームスポーツでは指導内容を記録するのは大変ですが、様々なアイデアで指導者・選手間で指導内容の共有を図っています。

たとえば、メンバー1人ひとりへの指導コメントをホワイトボードに書いて全員が共有するのもその一つ。指導コメントは、テキストマイニングの手法で分析しています。コメントの内容から技術指導、技術評価、状態確認などいくつかのカテゴリに分類して詳しく分析すると、指導相手によるコメントの量や内容の傾向、カテゴリ間の関係性やバランスなど、それまで見えていなかった傾向が見えてきます。また、最近では、コーチングのための言語解析に力点を置き、的確に動作を変化・向上させる言葉かけを探っています。

野球部練習風景
ホワイトボードへのコメント記載例
練習時ホワイトボードに記載されたすべてのコメントから指導内容を分析
テキストマイニングによって抽出された25カテゴリに、学年・起用法・守備を加えた項目でコレスポンデンス分析を実施。結果、1年はスキル確認が中心で指導は少なく、3年はレギュラーに対して調整のコメントが多く、ベンチメンバーには技術指導のコメントが多くなっていた。4年になると、状態確認のみに変化。2年は各学年の中間に位置し、さまざまなレベルの選手が混在すると考えられる。選手たちは4年間で、図右上にある『指導少ない』領域からスタートし、反時計回りで図右下の『状態確認』領域にゴールしてゆく

イメージのギャップを埋める
コーチングAIもパーソナライズ化⁈

同じ動作でも、人によって感じるイメージは違います。さらに、それをどんな言葉で伝えるかも違うでしょう。AIはそうしたギャップを埋めてくれる存在。
選手のスポーツ動作の映像を解析し、修正ポイントを指摘してくれる「コーチングAI」も誕生しつつあります。指示に対してどう反応するのか?など、選手の性格や癖までも考慮したAIコーチの誕生も決して夢ではないでしょう。スポーツの上達もまた、パーソナライズ化が進むと予想されます。

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