OMURA Motomasa
共通教育機構 人間科学教育研究センター特任講師
修士(教育学)
静岡大学
初学者に適したソフトウェア開発プロセスに関する研究

小説を読んだり映画を観たりするのも好きですが、一番の趣味と言えばレトロゲーム機や壊れたゲーム機の修理です。ゲームをするより修理のほうが好きで、動くようになったら誰かにあげてしまいます。

工学的な視点を取り入れた 
中学校のプログラミング教育を研究

プログラミング教育は2020年から小学校で、2021年からは中学校で必修化されました。義務教育の段階からプログラミングの考え方に触れ、ICT活用の素養を身につけることが目的となっています。
大村特任講師は、初学者向けのプログラミング教育のあり方について、教育現場と連携した実践的な研究を行っています。

プログラミングの重要なプロセス 
設計法をどう学ぶか

大村特任講師は、中学校の技術科で行うプログラミング教育を対象に、プログラムの設計をどう教えるのかを研究しています。問題・課題を発見し、解決のための方法や道筋を考えるプロセスは、他のものづくりと同様、プログラミングでも非常に重要なプロセスです。

大村特任講師はSEとしての経験から、プログラミングの現場で当たり前に使われている設計手法が学校のプログラミング教育に取り入れられていないことに疑問を持ち、研究を始めました。

設計内容の表現には設計対象や説明したい内容に合った多様な方法がありますが、中学校ではそのうちの一つ、システムの処理の流れを表現するアクティビティ図だけしか学ばないケースが多いのが現状です。そこで、工学分野で用いられる設計プロセスを整理し、技術科の指導内容にもマッチしたプログラムの設計法を提案。実際の授業に取り入れてもらい、教育効果を検証しています。

オブジェクト指向設計を取り入れた授業もその一例です。オブジェクト指向設計とは、システムに登場する操作や処理の対象となる要素のすべてを「オブジェクト(もの)」とみなし、オブジェクト同士が相互にやり取りしながら処理を進めていくようにシステムを設計する方法です。大村特任講師は双方向通信を含むプログラミングを体験しながら、オブジェクト指向設計の考え方を学ぶ教育方法を開発。実際に授業で実践し、そのプロセスを分析することで、生徒たちがオブジェクトの概念を理解し、シーケンス図によってシステム内の各要素の相互作用を表現する設計スキルを修得していくことを明らかにしました。

左)検証授業のために構築した学校授業用プログラミング環境
右)検証するプログラム開発(設計)方法を導入した授業ワークシート

端末に左右されることなく
複雑な処理のプログラムを学ぶ仕組み

また、学校におけるプログラミング教育の環境づくりにも力を入れています。

2019年から始まった国のGIGAスクール構想によって、学校教育における児童生徒1人1台の端末、高速大容量の通信ネットワークの整備が進みました。その一方で技術科教育にかけられる予算は潤沢ではなく、画像処理など複雑な処理ができるハイスペックなコンピュータを学校に導入しにくいという問題もあります。

大村特任講師は、Web API (Application Programming Interface)を使って必要な処理の一部を外部システムに任せるプログラミングを授業に取り入れることをめざしています。APIとは、プログラムの機能を別のプログラムでも使えるようにやり取りする仕組み。これがWeb上で提供されているのがWeb APIです。地図の表示にGoogle Mapの機能を埋め込んでいるWebページをよく見かけますが、あれはWeb APIの働きによるものです。

外部のプログラムを使うことで処理の負荷が軽減され、端末に左右されることなく複雑な処理をさせるプログラミングが可能になります。また、学習者がシステムの各要素の働きや、処理を分散・移譲するメリットをより深く理解できることも期待されます。すでに取り組んでいる大学の授業実践の成果を、今後、中学技術科の授業開発に活用していきたいと考えています。

左)画像認識を用いたロボットの開発風景
右)開発教材実践授業の様子(学生の利用シーン)
授業アンケートを行い,学生が「Web APIを利用する利点」をどう認識したのかを分析.

次世代のイノベーターを育てる
プログラミング教育とは!?

プログラミングは、ものづくりの中でも抽象的な思考が必要とされます。問題が見つかったとしても、その解決法は一つではなく、いろいろな方法の中で適切なものを検討しなければなりません。
プログラム設計とは、実物もなにもない中で問題解決までのストーリーを組み立てる作業です。子どもたちが様々なやり方を学び、豊富な経験を積むことができるプログラミング教育は、思考力を鍛え新たなものをつくり出す人材を育てることにつながりそうです。

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