トップアスリートたちが、天性の感覚で行っているスポーツのさまざまな動き。スポーツをする人なら、あんな動きをしてみたいと憧れた経験があるはずです。
村木准教授は アスリートの感覚的な動きを理論的に解析したり、スポーツのモチベーションに不可欠な「コミュニケーション」について分析したりすることで、アスリートのパフォーマンス向上、生涯スポーツ実践につながる指導法について研究しています。
村木准教授は子どもの頃から運動が得意、体育の授業では目立つ存在でした。高校卒業後に進学したのが筑波大学。全国トップレベルで世界の舞台をめざす多種多様な種目の選手たちが集結しており、大きな挫折を体験します。
そんな時に出会ったのが、物理法則を人の身体活動にあてはめて分析する「スポーツバイオメカニクス」です。分析にあたって、個々の選手の動きを重ね合わせて共通するエッセンスを抽出するための「標準動作モデル」の作成に取り組んでいます。村木准教授は当時自らの専門種目であった走り幅跳びで標準的な動力学モデルを作成。トップアスリート11名を対象とした検証としては初の試みでした。
走り幅跳びの仕組みを物理法則に従って見てみると、助走が速いほど遠くに跳べます。また、踏み切りの時に使う力の多くは、速さにブレーキをかける働きをしますが、このとき同時に地面反力が作用し「起こし回転」が生じることで、滞空時間が伸びるというメカニズムになります。ただ、人体は剛体と異なり足首・膝・股と関節があるため、曲がることでパワーロスが生じます。
つまり、力学的な正解は、「助走は速くする」「強い踏み切りのまま突っ張る=膝が曲がらないように耐える」です。しかし、選手の身体には個性があり、個人の中でも体の動きは変動します。「記録」「勝利」といった目的を達成するために、いかに工夫をしていくのかが指導者の役割です。その工夫は動作分析による「正解」を踏まえることで考えやすくなります。
スポーツのパフォーマンスを向上させるのに、日々のトレーニング・動作分析・戦略立案等は欠かせません。一方、実技面と同じ様にメンタル面「モチベーション」も重要です。生涯スポーツの観点からも、スポーツがしたいという欲求、スポーツすることが楽しいといったメンタル面での積極性がなければ、望ましい効果が得られないからです。
生涯スポーツにおいてモチベーションに大きな影響を与えているのは、他者との関わりです。そこで本学の「スポーツ実習」を履修する学生を対象に調査を行い、得られたデータに対してテキストマイニングを実施。授業を前半(2回目から5回目)と後半(10回目から13回目)に分け、授業中に会話した相手の名前を毎回記録して、クラス・競技別にその数を分析しました。
クラスや競技によってコミュニケーションの数に差がありましたが、全体的な傾向としては教員の介入が多い授業前半の方が、学生主体の授業後半よりもコミュニケーションの数が多いということでした。また、後半に進むにつれてグループ内に小集団が形成され、会話する相手が固定化することもわかりました。
コミュニケーションを活性化させるには、教員の介入が必要ではあるものの、介入による「強制的な」コミュニケーションであっては、自発的な行動には繋がりません。研究は途上ですが、小集団の形成や介入の仕方を考える大きなヒントになりそうです。
VR技術がもっと進んでいけば、例えば身体を動かすことができない人でも仮想空間上でスポーツを体感することができます。
また、世界記録を超える動きを、アスリートがVR上で体験することで、その感覚をリアルの世界で試し、パフォーマンスの向上をめざすこともできそうです。
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