KISHI Kaori
総合情報学部 ゲーム&メディア学科 准教授
大学院 総合情報学研究科 デジタルアート・アニメーション学コース 准教授
コンセプトデザイナー
遊戯史学 / 語学教育用ゲーム開発 / 絵本研究

くつろぎの時間には紅茶と手作りキャンドル、そして絵本があれば最高です。紅茶は色やフレーバーが好きで、カップにもこだわりながら楽しみます。冬には鮮やかな色とお気にいりの質感の毛糸で編み物をするのも好きです。

古代の遊戯をひも解きつつ
ゲームがもつ新しい可能性を再発見

ゲームの起源は、文明の黎明期まで遡ると考えられています。ゲームは、長い歴史の中で、人間の暮らしや文化と深く結びつきながら発展してきました。ゲームは仲間と楽しむだけのものではなく、神事とされたものもあり、世界を旅して、各国に根付いたりするなど、東西を問わず多様な形をとっています。
木子研究室では、人間社会や文化とゲームの関わりを探求し、ゲームの本質を知ることを通して、ゲーム作りに生かしています。

日本最古の盤上遊戯を解明し
人とゲームとの関わりを読み解く

木子研究室の研究テーマの一つは、日本最古の盤上遊戯、盤双六に関する研究です。盤双六は中国から渡来したゲームでルーツやルールにはまだまだ不明な点がたくさんあり、『譜双』などの古文書や各種文献に当たりながら解明を進めています。ルールには陰陽五行思想や、人間の生き方にも通じる点があるのが興味深いところです。

また、日本では貴族の遊びとして『源氏物語』『徒然草』などの文学作品に登場し、江戸時代になると遊郭の遊びの一種でもあったようです。盤双六は日本に伝わった際にさまざまな作法が定められたことなど、ゲームの歴史や人間・文化との関わりを読み解くのにも格好の研究対象と言えそうです。

古より伝わる盤双六。今では珍しくなってしまったが、対局動画で当時の遊び方を知る
彦根城博物館蔵 国宝 彦根屏風(江戸時代)
日本各地の美術館や博物館に所蔵された絵巻物や屏風絵の中にも、盤双六を楽しむ人々の様子が描かれている

地域社会の人とつながりながら
問題解決を経験する貴重なプロジェクト

研究だけでなく、盤双六を多くの人に楽しんでもらいたいと考え、積極的な活動を行っています。地元、四條畷市と連携して小学生に盤双六を体験してもらうイベントを実施したのもその一つ。学生が企画や交渉にあたることで、遊びがもたらす人同士のつながりやゲームを通じた学びの可能性などさまざまな視点を学んでいます。

その他、地域の歴史や文化の保存活動を行っている団体から依頼を受け、地元ゆかりの武将・楠木正行(まさつら)を広報し地域活性化につなげるための絵本やかるたの制作にも取り組みました。社会問題と向き合う貴重な経験であると同時に、制作を通して心をつかむ展開やリズムなどゲーム作りに役立つテクニックが学べる場にもなっています。

『楠正行かるた』(上)と伝承絵本(下)
南朝武将・楠正行の顕彰・伝承活動に取り組む市民団体「四條畷楠正行の会」の依頼を受けて制作した絵本やカルタ。地元の子どもたちに、分かりやすく楽しみながら地域の歴史を伝えてゆく大切なツールとして役立っている
小学生対象の盤双六体験イベント
「盤双六」は、古代エジプトの盤上遊戯を起源とし、3世紀頃に中東からシルクロードを経て中国へ。日本には7世紀頃に伝来したとされる。以降、江戸時代末期に至るまで多くの人々に楽しまれてきた。現代の子どもたちにも、この歴史ある遊びを体験してもらうべくイベントを開催している
『楠正行かるた』のカルタ大会
地域に根ざしたカルタで、大人も子どもも楽しめるイベントを開催。子どもたちには、すぐに理解することが難しいかるた言葉も、市民団体の方たちが分かりやすく意味をかみ砕いて伝える姿も見られる

ゲーム学の総合知から人のつながりまで
もっと一緒に「ゲームの時間」を楽しもう

「ゲームの時間」という考え方が世界的に注目されており、ゲームと遊びの理論的探究から実社会の応用まで、多岐にわたる研究が行われています。ボードゲームを囲んで楽しんだり、盤をはさんで向かい合ったりする時間は、人同士のつながりを深め、心の余裕をもたらします。
時には、着物を着てお香を立てて、古代ゲームを楽しむ「ゲームの時間」をしましょうか。

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