KIMACHI Akira
情報通信工学部 通信工学科 教授
大学院 工学研究科 情報工学コース 教授
画像・光計測 / センシング技術 / センサシステム
博士(工学)
東京大学

研究の動機である視点の一つは、生物が自然界から授けられた体の仕組みを巧みに利用して外界の情報を取得する姿には、見習う点が多々あるということ。そう感じる視点を大事にしていきたいです。

特殊カメラで撮影する一枚の画像が
画像センシングの精度と効率を向上させる

画像から必要な情報を取り出す「画像センシング」。
来海研究室では、光の強度が時間変動する成分を画像として抽出できるカメラを用いて、光の波長(分光スペクトル)を手がかりにした類似色物体の識別、形状・質感を同時に計測する画像センシングの手法を開発しています。

画像で見るその色は、実際の色と異なるかも知れない!? 
分光スペクトルを手がかりに情報を抽出する、実時間画像センシング手法

たとえばスマートフォンで撮影した赤い服。赤いものは赤く「見える」のですが、実際の色とは異なる場合があります。日常の記録ならそれでいいですが、農産物を見分けたり生体組織の異常を見極めたりするには、より精密な情報が必要です。その場合、色の元になる光の波長(分光スペクトル)まで立ち入り調べなければ区別することはできません。ですが、精密な計測をしようとすればするほど膨大な画像の枚数、それを用意する時間と労力がかかります。

現在、高速カメラは1秒間に1,000枚撮影できますが、対応できるハードウェアも必要です。また、それだけの枚数を撮影しているうちに調べるものが変化したり動いてしまうと計測できないという問題も。

これらの課題を解決するために開発を進めているのが「実時間画像センシング手法」。一般的なビデオカメラのスピードで、たった1枚撮影するだけで、計測に必要な情報を得られるという技術です。

識別困難な物体も分光スペクトルを手がかりに識別 
人の眼では区別できない類似色や三次元形状の計測もリアルタイムでとらえる

この研究で実時間=リアルタイムで撮影するのは、時間相関カメラという特殊なカメラ。数ある撮影手法のうちの1つがLEDを使った類似色物体の識別です。

たとえば少し古いタイプの蛍光灯の光は1秒間に120回点滅していますが、その時間変化のスピードに、ほとんどの人は気が付きません。ですが、時間相関カメラは1秒間に1,000回振動しているものと2,000回振動しているものを、カメラに指示信号を与えることで撮り分けることが可能です。

この機能を応用し、点滅スピードが異なる12種類のLEDを多数並べて物体を照明し、反射光から点滅スピードごとの感度調整を時間相関カメラが行い、分光スペクトルを区別することで、類似色の識別をすることもできます。さらに、形状と質感を同時に計測するシステム、運動物体の三次元形状を計測するシステムも開発中。今後はさらに画像センシングの手法の幅を広げ、時間や作業の効率化、精密さの向上へと繋げます。

病理検査から生育判定、文化財のデジタル保存など
幅広い分野で測定精度の向上に貢献!

類似物体の識別の研究が進みシステムが開発されると、がん細胞などの異常な組織を調べるための病理検査や、農作物の色で実り具合を調べる生育判定、また美術品の真贋判定などに応用できます。
また、形状と質感情報を同時に計測するシステムが確立すれば、文化財のデジタル保存や、ECサイトに掲載される商品画像と実物とのギャップを埋める際に役立てることができるなど、幅広い分野でより精度の高い測定ができると期待されます。

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