NISHI Shogo
情報通信工学部 情報工学科 准教授
大学院 工学研究科 情報工学コース 准教授
博士(工学)
鹿児島大学
光情報処理 / 色彩画像処理
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若い頃から車が好きで、今でもドライブが好き。自分の狙い通りにコントロールするのが醍醐味で、「自動運転車なんか絶対に無理」。鹿児島の実家への帰省も1,000キロの道のりを車で往復しています。

人類の財産を未来に残す技術 
人の目に映るアート作品の姿を正確に再現する

アート作品は理想的な環境で保存しても少しずつ劣化し、やがて破損してしまいます。デジタルアーカイブは、そんな貴重な財産を次の世代に継承するための技術。
西研究室では、分光情報を活用して人の目に映る作品の姿をCG画像として正確に再現する技術研究を行っています。

絵画の色や筆致、質感に関する情報を推定し
本物により近い画像として再現する

研究テーマの一つは、油彩画の画像情報です。一般のカメラは赤、緑、青の3つの波長に分けたデータを合成し画像として再現していますが、西研究室ではもっと詳細な画像情報を得るために、物体の画像情報を9つの波長に分けて取得できるシステムを使用。さらに照明を真上と周囲8方向の合計9方向から当てた時のデータを集めています。

こうすることで、色情報に加えて絵の具による微小な凹凸など形状の情報、油膜やニスなどによる陰影や光沢の情報が推定でき、より正確なCG画像が再現できます。推定した色情報は実物の絵画が持つ色情報とかなり似通ってきており、手ごたえは十分。今後も、さらに再現性を高めるためのアプローチを続けていく予定です。

油彩画の真上にカメラを設置し、9つの光源を切り替えながら撮影
絵の一部分について、どの波長の光をどれだけ反射するか(分光反射率)という基準で評価したグラフ。推定した色情報のデータ(赤線)が、実物を測定したデータ(黒線)に近づくほど正確な再現ができていることを示します

景色は人の目にどう映っているか 
人の色知覚モデルを応用した画像処理技術

最近ではスマートフォンカメラにも標準で搭載されるようになったHDR画像は、明るいところから暗いところまで広い範囲の情報を一枚の画像として表現する機能です。人間の視覚に近い画像を再現するための機能ですが、その画像は人の目で見た景色とはまだまだかけ離れたものになっています。

西研究室では、モデル化された人間の視覚特性を画像処理のアルゴリズムに組み込み、人が景色を見る時の見え方に近い色を画像として再現する研究を進めています。一色だけを使った画像については精度のよいモデルがつくられ始めていますが、さまざまな色が混じり合っている景色のような画像のモデル化はまだまだこれからの分野。より精度を高めていくための試行錯誤を続けています。

上・中:露光時間の異なる数枚の画像を1枚の写真に合成するのがHDR画像
下:人間の視覚特性を組み込んだアルゴリズムによって再現された画像。元のHDR画像から色味がだいぶん変化しているのがわかります

より正確な人の視覚の再現で
リモート作業や教育・研修がもっと充実

人の視覚をCG画像で正確に再現する技術は、VRの没入感を高めるといった可能性だけでなく、医療や農業などさまざまな分野での活用が期待できます。
手術室の照明下での見え方を再現した画像で手術のシミュレーションが行えれば、より実践的。視覚的な違和感からくるストレスも軽減でき、安心感が増します。また遠隔治療の精度を高め、内視鏡を使った治療の範囲が広がることも期待されます。
農業分野では、色の見え方を再現することで生育具合や病気の判断など、より正確な栽培状況の把握に役立ちそうです。

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