UEJIMA Akihiro
情報通信工学部 情報工学科 准教授
大学院 工学研究科 情報工学コース 准教授
アルゴリズム / 計算量理論
博士(情報学)
京都大学

子どもが小さいこともあり、プライベートはもれなく妻とともに子育てに励む毎日。体を動かすのが大好きなので、コロナ禍で中断している研究室対抗ソフトボール大会が復活することを願っています。

身近にもたくさん存在する最適化問題を解く 
アルゴリズム理論の基礎研究

一定の条件を満たす組合せの中から、最もよい組合せを選ぶような問題は、アルバイトのシフト、ルートの検索、スケジューリングなど私たちの身近にもたくさんあります。
上嶋研究室では、こうした「組合せ最適化問題」において効率のよいアルゴリズムのあり方を探っています。

問題が難しいかどうかを証明することが
世の中の問題解決の第一歩になる!?

「組合せ最適化問題」の中には、コンピュータの計算速度が飛躍的に向上しても現実的な時間では解けない問題も存在します。解けない問題ならば、正解でなくても近い答えを得る方法を考えるなど、現実的な対応が取れます。効率の良いアルゴリズムでスパッと解ける問題なら、それを追い求めることになります。

このように、問題が本質的に持っている難しさを明らかにすることは効率の良いアルゴリズム設計の第一歩。問題の本質的難しさを計算困難性と言いますが、上嶋研究室ではその証明とともに、それを活用した暗号技術の基礎研究を行っています。現実的な時間では解けないような難しい問題は、安全性の高い暗号の設計に活用可能なのです。

すべての訪問先をどのような順序で回れば移動距離が一番少なくて済むのかを求める問題は、組合せ最適化問題の一つ。拠点が増えればコンピュータで速く解くのが難しい問題として有名

情報の中身を隠したまま
「情報を知っている」ことだけを相手に納得させる暗号理論

主要な研究テーマの一つは、暗号理論の重要な概念である「ゼロ知識証明」の実現です。

「ゼロ知識証明」とは、パスワードなど秘密情報自体は明かさずに、その情報を知っているという事実を証明するという手法。公開鍵暗号やデジタル署名、ユーザー認証などに応用されている技術です。

上嶋研究室では、計算困難な問題の中から身近なパズルの問題に着目。「ゼロ知識証明」を実現するプロトコルを、コンピュータではなく、トランプカードのような身近なアイテムを使って設計し、アルゴリズムの最適化を探っています。

暗号機能を手軽に目に見える形で表すこのような設計は、暗号プロトコルについてのデモンストレーションや導入教育に活用できることから最近研究が進んでいる分野です。

●5枚のカードを使う暗号プロトコル。この図のような操作をすると、a子とb男がともに「Yes」である時だけ、3枚の♡が巡回的に連続して並ぶ。人の手でもプロトコルが実現できることを示している

問題が簡単に解けないことを原理的に解明することは
100万ドルの懸賞金がかけられるほど重要

計算困難性の問題に関係するのが、米国のクレイ数学研究所が発表したミレニアム懸賞問題の一つにも選ばれた「P≠NP予想」です。
「P≠NP予想」とはざっくり言うとPとは解きやすい問題のグループで、NPとは答えの正しさを簡単に確認できる問題のグループ。NPの中には簡単に解けない問題があると予想されており、世界中で50年以上研究が進められています。P≠NPだとしても、この予想を追求する過程で得る新たな数学的な知見が世の中のいろんな問題の解決に役立つはずです。

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