SAKAGUCHI Masahiko
情報通信工学部 情報工学科 准教授
大学院 工学研究科 情報工学コース 准教授
博士(理学)
高知大学
計画数学(マルコフ決定過程)/ 統計
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出張先ではおいしいものを一人で食べにいくのがルーティン。一人で行くと隣の人やお店の人が、地元の人しか知らないグルメを教えてくれることも。この思いがけない出会いを楽しみにしています。情報を与えてくれる人に出会うことで、自分の中の情報もアップデートします。

社会で起こるさまざまな現象を分析し 
世の中を変える意思決定をサポートする

2013年、将棋AIがプロ棋士を初めて負かしました。将棋AIは、勝利するまでに取り得る無数の手を繰り返しシミュレーションし、どんな状況にあっても最良の手が打てるまでに精度をアップする強化学習という方法で学習しています。
この強化学習の理論となるマルコフ決定過程とその応用が、阪口研究室のテーマです。

臨床試験の目的に合った応募者をマッチング 
被験者が集まりにくいという課題を解決                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

強化学習を使うと、データを分析し、状況の変化にも対応しながら、設定された目標に向けて最適な方法を提案することが可能です。将棋のようなゲームだけでなく、Netflix、SpotifyやZOZOのアイテム推薦などの社会のさまざまな分野で活用されています。

阪口研究室では、強化学習の数理モデルを研究し、医療などの分野に生かすことを目標としています。人を対象に医薬品や機器などの有効性や安全性を調べる臨床試験のマッチングもその一つです。臨床試験は医学の進歩に不可欠ですが、臨床試験参加者が集まりにくいのが課題。そこで臨床試験のデータを分析し、試験の情報をどう提示すれば関心のある人に届きうまく被験者を集められるのか、募集案件と応募者をマッチングさせるエンジン開発に必要な基礎研究を進めています。ドイツではViomed社が臨床試験データを活用した臨床試験参加者マッチングのサービスを展開中です。

SNSの分析で患者の悩みや症状を拾い上げ
明らかになっていない治療ニーズを探る

医療現場での意思決定をサポートする研究にも取り組んでいます。慢性疾患の患者の時系列データを、安定した状態かどうかを評価するエネルギーランドスケープという物理学の方法を応用したモデルを使って分析。病状の変化を可視化し、治療法の選択やタイミングの決定に役立てようとしています。

エネルギーランドスケープ
エネルギーの波動が分かれば、どのタイミングで治療を行うことが良いかを可視化することができる

また、がん患者で構成されたSNSの分析も進行中。患者同士の気軽なコミュニケーションの中で話題にされている不安や悩み、症状を拾い上げることで、対処法が確立されていないような患者の治療や生活ニーズを明らかにすることにつなげます。個人の助け合いのデータを統計的に処理することで、新しい視点を生みだし、社会を変えていく。そんな期待が集まる研究です。

疾患特化型SNSは、英語圏では『Patients Like Me』が有名ですが、日本では6万件以上の闘病記が集まった『TOBYO』、病気・障害の当事者と支援者の『CARE LAND』、女性のがんに多い乳がんや特有のがんである子宮頸がん患者のための『Peer Ring』、生命保険会社が運営している『tomosnote』などがあります。 病気を治すこと以外にも各人の生活に踏み込んだデータがそこには存在します。

疾患特化型SNSを分析し情報を活用
がん患者さんで構成されたSNS。気軽なコミュニケーションの場で話題になっている患者ならではの不安や悩み、症状を拾い上げることで、まだ医学的な対処法が確立されていないような治療や生活のニーズを明らかにするような取り組みも始まっている

納得する理由を示していい方法を提案
AIに学べば人の能力はもっと進化する!?

世の中が複雑化・高度化すると、どんな行動をとればいいのか選択に迷う場面が増えてきます。強制されたり誘導されたりするのは困りますが、「こういう理由でこうしたほうがいいんじゃないですか?」と、納得できる理由を示して選択をサポートしてもらえると助かります。
データから新しい物事の捉え方や戦略を提案するAIが発達すれば、将棋AIで学んで実力を蓄えている若手棋士たちのように、人間の能力もさらに進化していくかもしれません。

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